今回は「HighwayX」に収録の【SLEEPLESS】の歌詞の意味を考察していきたいと思います。
ほのかな君の寝息
君と主人公はある約束をしていますが、先延ばし気味になっているようです。
付き合っている男女の約束と言えば、結婚などでしょうか。
眠れない主人公に対して、「君」はすやすやと眠っているので、
主人公だけがこのことについて思い悩んでいるようです。
ここから推測してみると主人公は、
結婚しないことで君の気持ちが離れてしまうかもしれない、という不安感を抱えているのかもしれません。
この曲はコロナ禍のあらゆる分断を歌った曲らしいです。
そのことから、コロナによる分断とそれによって離れてしまう人間関係のことを、
主人公は「僕」と「君」の関係に当てはめて考えて不安に思っているようです。
街の灯りは消され
この部分は個人的な分断に加えて、社会的にも分断され不安や戸惑いが渦巻く様子を描いています。
眠れない主人公が外を見ると、街の灯りが消されています。
コロナ禍で多くの店や企業が潰れ、自分の生活の先行きも不安な状態。
この不快な状態で、誰かに原因を求めて責めたくなりますが、
コロナというウイルスのせいなので、もちろん誰も悪いわけではありません。
明日こそはさ思い切って
緊急事態宣言による自粛によって、家の外に出られないという閉塞感がありました。
宣言が出ていなくてもなんとなく遠出することに罪悪感や不安を抱えたりみたいなこともあったかもしれません。
そんな状況を打破して、車をとばして遠くまで行きたいと主人公は願っているようです。
「遠く」という表現は
【遠くまで】に代表されるような「辿り着きたい場所」や
【睡蓮】などに出てくる「ここじゃないどこか」を指しているようです。
どちらにしても、この閉じ込められたような世界では達成することは難しいように感じます。
眠れぬ夜を繰り返し
こんな膠着状態の夜を繰り返し、主人公はどこか遠くに辿り着けるのかと不安に思っています。
それでも今は遠くに行かず、ただ君とはぐれないように朝が来るのを待ちます。
われがわれがと安心くれと
この部分から思い起こされるのは、マスクや消毒液などが品切れになっていたことだと思います。
自分に必要な分だけでも買おうと思っていた人や、品切れを心配して多めに買っていた人達がいる一方、
そんな人達を相手に儲けようと転売目的で買い占めをしていた人たちもいました。
そんな社会的な状況をこの部分で歌っています。
バカな事ばっかしてると
そんな状況にいながら、彼らをバカな事ばっかりしていると君と笑い合っていますが、
「君」と「僕」はそれぞれどの人達のことを笑っているのでしょうか。
品切れの当時、私達は自分の身を守るためにマスクや消毒液をなんとか手に入れたと思います。
つまり、売り場に行くか、転売されたものや高額で販売されているものを買うなどをしている筈です。
ツテなどで貰う手段もありますが、そのくれた人だって必ずどこかで購入をしていると思います。
つまり、前述の「われがわれが~」のいずれかに私達は必ず属していたことになりますよね。
そんな中では「君」と「僕」がバカだと思っているのが、
本当に同じ人達のことを指しているのかわからないのではないでしょうか。
もしかしたら、「君」は売り場に殺到している人を笑っているかもしれないし、
「僕」は闊歩する階級を目指している人のことを笑っているかもしれないのです。
つまり、「僕らの距離はどれほど離れてるの?」とは
同じものを見て笑いあえるほど近い距離にいるのに、
実は見ているものが全く違うかもしれないという価値観の違いのことを言っているのだと思います。
またコロナに関する例えになりますが、
ワクチンやウイルスに対しての考え方がびっくりするほど異なる人が家族や身近な人にいませんでしたか?
今まで普通に仲良く接してきたはずなのに、
これほどまでに考えや捉え方、対処の方法が違うのかとコロナ禍になってから気づいた人もいるかも知れません。
そういった同じような境遇で近くにいた筈なのに別の世界の人のように感じる…
といった価値観による分断をこの部分で歌っているのではないでしょうか。
誰もわからない答えを
そんな異なる価値観や考えに対して、どっちが正解であるかなんて誰にも分かる訳ありません。
誰かが答えを無理やり決めたとしても心の分断は深まるばかりです。
行き着く先に君もいてよ
やっぱりいつまでも君と一緒にいたいのは変わらないようです。
そのためには、周りの空気や考え・価値観に左右されずに自分自身で考え、
不安や分断という闇に飲み込まれないように朝が来るまでStay awake=「起きたままでいよう」と決意します。
このStay awakeはもちろん比喩で、
「目が覚めたままでいる」=「真実を見逃さないようにする」「流されないようにする」といった意味合いだと思われます。
まとめ
コロナ禍を夜に、その分断による不安を不眠として例えた歌です。
夜の間の不安に耐え、君とはぐれないように朝を待つ、
つまり「コロナ禍が収まった後まで大事な人と一緒にいたい」といった曲です。
最初は「眠れない」だったのが「眠らない」に変化していくところに
この鬱屈した状況でもなんとか前を向いていこうと思える一曲です。